「ファン・クラブ通信」 第4号 (2003/11/27) ≪ 今週の話題:英会話に英文法は必要か その3 ≫
2003年11月27日
皆さんこんにちは。 今回も前回に引き続き、『英会話に英文法は必要か?』
その3送りします。
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よしお:
「前回英文法が必要な理由として、頭の中で 英語→日本語、日本語→英語
の暗算変換のために正しい英文法の知識が必要だと伺いしました。 そのほか
にも英語で会話する場合、英文法知識が必要なことはあるのでしょうか。」
パソコン英会話:
「そうですね。母国語以外の言葉で話すとき、会話に関して『熟練』の域、つ
まり『体で覚え、反射的に言葉にでる』までは英文法の知識が必要だと申し上
げました。 しかしそれだけではありません。 今回は『教養ある英語を話す
には英会話熟練を習得しただけでは充分ではなく、どうしても英文法知識が必
要だ』と言うことについてお話しましょう。
ファナックの海外会社に赴任し、5~10年程仕事をして帰国してきた社員達
の殆どは、「英語ペラペラ」と、外部からは、思われるほどになっています。
しかし私の目からみれば英文法的な誤りが多く、このようなことでは『ファ
ナックの名折れ』だと残念でたまらないのです。 私としては『世界のファナ
ック』を代表する幹部社員だなと外国人の信用と尊敬を得るような英語を話せ
るようになってもらいたく、私のファナック社員に対する英語教育では(ファ
ン・クラブ通信 3号で説明したような)独自の英文法教育を5~6時間行っ
ているのです。
日本人の英語にそこまで期待するのは高望みし過ぎではないかと思われる方も
いるかも知れませんが、そうではないのです。 英文法的に間違わない英会話
力を日本人につけさせるべきとの私の考えが正しいと言うことは最近私が読ん
だアメリカの言語学者の本で確認でき、意を強くした次第です。
その本は:
“You Don’t Say!”, Tom Parks, Ph.D.氏 著, Time Warner Company発行
のペイパー・バウンドの本です。ご興味のある方はぜひお読みください。
amazonなどの通販サイトをご利用されれば購入できます。
その本の第1章で
『貴方が話す、或いは書く英語は貴方の人格そのものを表すものだ。 普通経
済的に富み、社会的に高い地位にある人は、その人にふさわしい服装をし、自
動車を持ち、住宅を持ち、職業を持ち、肩書きを持っているものだが、たまた
まその人が学校時代に余り勉強しなかったので英文法に弱いと、その人がしゃ
べったり、書いたりした際に、教養の無さがばれてしまい、その後、あらゆる
面で、非常に損をする。 それほど人と言うものは相手のしゃべり方、書き方
でその人の価値判断をするものなのだ。』
と述べられています。
又『英文法に弱くて拙劣な文章をしゃべるが故に見下されて、その後出世しな
いことさえあり得る、しかも危険なのは、軽蔑しても、どのような文法的過ち
をしたかは、本人には誰も言わないので、本人は何時までたっても自分の弱み
にきづかないと言うことがある。』と言ったことなのです。」
ひろし:
「分かるような気がします。 会議やプレゼンテーションを聞いているとき、
発言者やプレゼンターの言葉が、同じ内容でもまったく印象が変わる場合があ
ります。 もちろん日本語ですが….、 中には変な癖を持った話し方をする
人がいますよね。 文法的におかしいのもよく見受けられます。 まさに『お
里が知れる』ですね。」
パソコン英会話:
「そうです。 会話からその人の人格がにじみでることがあるのです。
さて、さらにこの本が面白いのは、教養のないアメリカ人が犯す文法的誤りの
中には、日本人なら犯さない、つまらない誤りもあると言うことです。 もっ
とも日本人にも難しい文法問題もあることにはありますが。
アメリカ人が犯しやすい誤りの例を紹介することにより、結局彼らは、日本人
のように、英文法を絶えず考えながら文章をつくっているのではなくて、小さ
い頃から『音声的』に口移しで言葉が頭にこびりついていて、その頭の中に大
量に在庫されている文章から、その都度必要な表現を引っ張りだしてしゃべっ
ているのだな、と言うことが分かって、その意味でもこの本は興味があったの
です。
一方日本人が英会話上で犯す英文法的な誤りは英文法知識不足からくる場合
もありますが、知っている英文法でも、その通りに頭が速く回転しないで間違
ったことを言う場合が非常に多いのです。 次にアメリカ人の文法的誤りを紹
介しましょう。
1.格の誤り:
名詞の格の意識がないことからの誤り。 →の左側が誤りで、右側が正しい。
between you and I → between you and me
He told Ted and I. → He told Ted and me.
The person asked for he and Sally. → The person asked for him and
Sally.
ただし、This is he. は正しい。 Heは補語で、thisの主語は主格だが、補
語も主語と同様に主格。
2.英文法的混同:
it is が簡略化された it’s と itの所有格の its
it’s eyes → its eyes
アメリカ人は音声で言葉を掴んでおり、教養の無い人は文字意識、文法意識
がないから、このようなつまらない混同をする。 所詮、発音では i’ts も
itsも同じこと。
また、
Mary’s eyes
David’s eyes
A frog’s eyes
A bird’s eyes
と言うから、何故 it の eyes なら it’s eyes と言わないのかとの疑問を
持ち勝ち。
3.every の単数扱い:
everybody are → everybody is
Everyone should complete their assignments.
→ Everyone should complete his or her assignment.
4.一番近い主語に動詞を合わせる:
Either they or I are going to pull the rope.
→ Either they or I am going to pull the rope.
Mary, Jack, or I are the one to go.
→ Mary, Jack, or I am the one to go.
Mary, Jack, or I is the one to go.
→ Mary, Jack or I am the one to go.
しかし or でなくand で主語が結合されていると are が正しい。
A handshake and a smile is a good way to greet customers.
→ A handshake and a smile are a good way to greet customers.
そして補語の部分は good waysではなく a good way が正しい。
しかし and でも次の場合は主語が2つでも動詞は単数扱い。
Ham and eggs is a favorite dish. これは Ham and eggsは1枚の皿に乗
った1種類の料理(dish)だから。 この文章で補語は単数扱いとなっている。
同様に主語も単数扱い。
5.Good, wellとbad, badly の使い方:
I felt badly about the whole situation.
→ I felt bad about the whole situation.
She felt really well about the big raise in her salary.
→ She felt really good about the big raise in her salary.
After she gave birth to twins, she felt good enough to travel.
→ After she gave birth to twins, she felt well enough to travel.
I was sorry that he felt so badly about their divorce.
→ I was sorry that he felt so bad about their divorce.
感情の場合は形容詞補語、身体的な場合は副詞。
6.who と whom:
Who do you want to send?
→ Whom do you want to send?
Who do you trust?
→ Whom do you trust?
She wondered whom the culprit might be.
→ She wondered who the culprit might be.
She wondered who the culprit might kill.
→ She wondered whom the culprit might kill.
この who と whom は間違って使っても意味は通じ、そうたいした誤りとはアメ
リカ人社会では思われない。 現に DynEd の CD-ROM 教材では、この誤りが
含まれているが、これは自然味を持たせるために敢えてそうしているようだ。
しかし、主格の時には whoを用い、目的格の時に whomを正しく選定した方
が教養ある人には受けが良い。
Henry did not know whom was awarded the trophy.
→ Henry did not know who was awarded the trophy.
この場合 know と言う他動詞の目的語は「誰がトローフィーを授与された
か」の文章全体であって、「トローフィーを与えられた」と言う受身の文章
の主語の人は主格扱いとして whoを用いる。
of whom
to whom
at whom
for whom
on whom
in whom
by whom
などの前置詞のあとは前置詞目的語として目的格の whom とするのは当然。
このようなことが音からのみ英語に入ってきているアメリカ人には分かりに
くいらしい。(英文法を勉強した人は別だが。)
更に、次のような、発音が全く同じ who’s と whose の区別が彼らにはつき
にくいらしい。
She is a singer who’s (who is) beloved world-wide. 正しい
She is a singer whose voice is beloved world-wide. 正しい
少々長くなりましたが、以上のようにネイティヴのアメリカ人であっても文法
的に間違いを犯してしまうものなのです。 ただし、それでは教養ある尊敬に
値する人だと評価されません。 ですから、説得力のある、人に聞いてもらう
会話をするには正しい英文法知識が必要なのです。」
みゆき:
「具体的な例を挙げて説明していただいたので、アメリカ人でも文法的におか
しい話し方をするということがよく分かりました。 それでは仕事についての
話はできませんね。 ビジネス英語には『英文法知識』は不可欠なんですね。
そして、英文法はなるべく早い時期に覚える必要があるような気がします。
変な癖がついてからでは遅いのですから。
ところで”パソコン英会話”さんのホーム・ペイジを見ていて思ったのですが、
遠藤式英会話習得法で勉強すると、覚える速度が10 倍と書いてありますが具体
的にはどういうことなのでしょうか。 なるべく速く、効率的に勉強したいの
でお聞きしたいと思います。」
パソコン英会話:
「はい分かりました。 遠藤式英会話習得法で学習すると、独学であるにもか
かわらず大変効率的に覚えることができるのです。
10 倍の速さで覚えられるというのには、具体的な裏づけがあるのです。 その
裏づけの具体例については、次回ご説明したいと思います。」